会長挨拶

モンゴル緑化10年の歩みと展望

モンゴル緑化日本協会会長 石川多聞
モンゴルでの緑化活動の端緒は、1993年(平成5年)春に池田憲彦氏(拓殖大学教授・今年3月退任、当協会顧問)と福井武氏(現NGOアジア森林の会)が、モンゴルにおける緑化事業の実情を把握するために、駐日モンゴル大使館の協力を得て訪問をしたことにあります。
以後、池田氏を中心に伊藤好雄氏(現NPO常務理事)がモンゴル緑化のための現地調査を数回行い、1995年(平成7年)秋に訪問した折り、モンゴル科学アカデミー森林研究所ジャルバ研究員(中央ゴビ緑化専門)からの意見で、中央ゴビ県に植林計画地として妥当な場所があるとのことで、視察の結果、当時は通年流れていた内陸河川オンギン・ゴルの川辺に計画地を定めました。
私が参加したのは、この時点からであります。

最初の派遣

第1次は、1996年(平成8年)5月に総勢20名を派遣しました。
団の名称を「IAGMF・モンゴル緑化茨城委員会」とし、「ヒーディン・オル(寺の山)植林プロジェクト」と名付けました。苗木は、自生のゴビ・ポプラ、乾燥に強いザクを植えて参りました。
植林に適した季節ということで5月に渡航という準備の最中に、モンゴルでは近年にはないという大山林火災が発生しました。
百数十箇所から発火したといわれ、焼失面積は北海道位といわれております。
派遣団は、急遽、ゴビの計画地だけでなく、ウランバートルから北方数十キロにあるテルルジ(旧ソ連人の保養地・現国立公園)の南側にある山林焼失地に松の苗木の植林と種を蒔きました。
最初の派遣団結団式には、当時の駐日大使であったドルジェンツレン博士(前大統領外交顧問)が出席されました。橋本知事を表敬訪問したおりに、知事から森林火災に見舞いが述べられ見舞金100万円が贈られました。
忘れられない思い出として残ることは、モンゴルへの出発に際し、ドルジェンツレン大使も同行し、今は亡き内閣官房長官・梶山静六先生の官房長官執務室を訪問、先生から激励をいただいたことであります。

今日までの交流と活動

お蔭様でモンゴル緑化活動も10年の節目を迎えることが出来ました。
初期は、モンゴル国立大学の協力で植林活動を行ってきました。以後、自然環境省の支援、科学アカデミー、国立科学技術工科大学、それと日本大使館、モンゴル日本センターなどの協力を得て、植林活動はもとより、各般の課題について調査、研究、交流を図ることができ、より具体的について実践・協力活動を続けております。
この間、オンギン・ゴル植林地の所在するサイハンオボウ村の小・中学校へ、中古のパソコンや学用品などを贈り、また日本の紹介、植林の意義への理解を深める交流などを行ってきました。小・中学校では、植林のクラブ活動を始めるとともに、私どもが持っていった数々の資料を展示し、教育やクラブ活動に活用をしています。植林にもさんか、さらに水掛などの活動も行うようになって参りました。
第9次(平成16年)派遣で特記しておきたいことは、首都ウランバートル市内には、いろいろな事情で親子が一緒に生活出来ず、マンホール・チルドレンとかストリート・チルドレンと言われる子供たちがおります。そうした子供のなかで、施設に収容され元気に勉学をしている子供たちが、ゴビの植林に参加したことであります。親の愛情に飢えている彼らが、日本人、現地の小・中学生、大学生たちと一緒の活動や食事など、生活を一緒に出来た嬉しさを聞かせてもらえたことです。
茨城県の協力で、平成10年から毎年モンゴルからの技術研修生一人を受け入れ、(今年度で8人)、県林業技術センターで研修をして参りました。帰国した研修生は、それぞれの立場で活躍をしておられます。
善意の協力では、まず茨城トヨタ自動車㈱の協力を記しておかなければなりません。ランドクルーザー1台、救急車1台、消防車3台の寄贈があったことです。さらに数十社の企業や個々人からの継続した助政援助であります。
今日10年間継続できたのもこうした多くの皆さんの心のこもった支援があればこそと、ここに深く感謝を述べさせていただきます。
ここで報告を申し上げることは、今までモンゴル緑化茨城委員会として活動を続けて参りましたが、平成16年11月に名称を「NPO法人・モンゴル緑化日本協会」と改め、法人登録をしたことであります。モンゴルの自然環境の回復、住環境の整備、人材の育成など、充実した組織をめざし、運営をしていきたいと考えております。

これからの展望

緑化活動は、モンゴルにおいては重要な課題であります。私どもの活動は、更に一層活動を活発化していく必要があります。同時にモンゴルに留まらず、日本国内での意識の高まりも重要な課題です。そのためには、組織のより広範囲化と充実、若者の参加を図ることが重要な課題となっております。
モンゴルにおけるわれわれの植林活動の内容でありますが、単に日本人が植林をしても、その成果は微々たるものです。モンゴル人による緑化活動を活発化する支援活動がより一層重要な課題ではなかろうか、と考えております。
JETRO(日本貿易振興機構)のモンゴルの地方と日本の地方産業交流事業(L&L/ローカルtoローカル)を、チャチャルガン(ロシア・オリーブ)の有効利用の確立と、事業化への具体化を計りモンゴルの田舎と日本の田舎との経済交流の第一歩が踏み出せる基盤の確立を検討しております。チャチャルガンの生産体制の確立を図ることは、モンゴルの緑化と地域経済活性化のためにも重要な活動であると思います。
10年の経験は、モンゴル緑化と同時にモンゴルの様々な課題に対応する交流・活動に大きな期待のできる環境が出来ました。
今後とも、みなさまの更なるご支援をお願い申し上げます。


NPO法人モンゴル緑化日本協会
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